2019年11月、私は盛岡市の高松公園に4才の娘と出かけました。
娘はこのバナナ滑り台に関心を抱き、はじめのうちは、
写真左後方の、小さな緑色の滑り台から遊んでおりました。
そののちに、バナナ滑り台へと続く階段を容易に登りました。
娘がバナナ滑り台を滑り始めると、股間が写真右側の分岐部を挟む形となり、
勢いがあるため上半身が前のめりになり、頭を真下に向けて転落しました。
分岐部から地面までの落差は約1メートルあり、
頭蓋内出血や頚髄損傷を覚悟するほど恐ろしい瞬間でした。
私は全く予見できておりませんでした。もちろん娘も。
不幸中の幸い、滑り台の下で待ち構えていた私は、
とっさに手を伸ばして、逆さまになった娘の足首を捕まえることができ、
結果的には娘はタンコブで済みました。
4歳の娘は、寝たきりの生活を余儀なくされていたかもしれない。。
直ちに盛岡市の公園管理課に電話を入れ、
市の職員さんと一緒に現場の検証を行いました。
そして市から製造メーカーへ伝えてもらい、その対応を待ちました。
しかし残念ながら、
製造メーカーからの報告と対応は期待していたものとは全く異なりました。
①そもそも遊具の対象が6歳~12歳である
②過去にも分岐部から転落した事例は複数把握しているが、
全て対象年齢未満児による事故で、全て軽傷であった
➂遊具はJPFA(一般社団法人日本公園施設業協会)の安全規準
を満たしている
これらの理由から遊具の改修は必要なし、と報告書をまとめました。
そしてメーカーは推奨する対策として、以下を示しました。
①対象年齢表示シールを新しいものに貼り換える
②地面に砂を盛る
これを受けて、
市はメーカーの推奨する対策を採用することに留まりました。
「鈴木さんの気持ちも分かりますが、専門のメーカーが言うことなので」と。
私はとても納得ができませんでした。
確かに保護者にも落ち度はあります。
しかしメーカーの言うように、シールを貼って注意喚起するだけでは、
気が付かない人は気が付きようがありません。
ジャングルジムなどからの転落とは違い、
バナナ分岐部からの転落を予見することが困難であるという点も、
この遊具の危険度を高めています。
地面に砂を盛ったところで雨風ですぐに流されてしまいます。
是が非でもハード面での対策が必要である、
と私は市にもメーカーにも訴え続けました。
例えば
①そもそも転落しないように隙間を無くす
②地面の環境を、根拠に基づいた安全マットなどに置き換える
②滑り台への階段を、幼児には登ることが困難な構造にする
国民生活センターにも事故を報告致しました(注*)
JPFAにも事故の報告と質問を送りました(注**)
しかし、残念ながら事態は変わりませんでした。
たまらず盛岡市議会議員さん2名に現場を見てもらい、
この遊具に潜む危険性を実感して頂き、ようやく使用中止となりました。
そして事故から半年以上たった2020年の6月下旬に、バナナ滑り台は、
一般的な滑り台への改修(付け替え)がなされました。
バナナ滑り台は全国で236台の設置がなされているとのことです。
分岐部からの転落、股間や生殖器の傷害など、
いつ重大な事故が起きても不思議ではありません。
子供自身は痛い目にあっても、親に報告しない可能性があります。
そして、おそらく多くの保護者の皆様は、子供が危険な目にあったとしても、
自分の責任にしたり、あるいはどこに訴えれば良いのか分からない、
このような状況が想像されます。
この遊具による重大な事故を防ぐために、情報を募集しております。
・バナナ滑り台を見かけましたら、その場所をお知らせください
・もし事故情報がありましたら、あわせてお知らせください
事故情報の有無に関わらず、私から設置している自治体に
・私が経験した事故の情報
・お寄せ頂いた事故の情報
これらをまとめて情報提供致します。
情報、問い合わせコーナーより連絡を頂けますと幸甚です。
不特定多数の利用者が存在する公園です、
命を守る構造があってこその公園遊具であるべきです。
今後も注視し、できることを一つ一つ積み上げていきたいと思います。
2023年1月29日
弁護士ドットコムニュース様が記事にしてくださいました
https://www.bengo4.com/c_18/n_
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謝辞
お忙しい中、市民の声に耳を傾け、今回現場に立ち会って頂いた
盛岡市市議会議員 櫻 裕子 様
盛岡市市議会議員 加藤麻衣 様
そしてこの事故を一緒に考えて下さった
公益社団法人日本技術士会登録
子どもの安全研究グループの皆様
一般社団法人いんふぁんとroomさくらんぼ
理事長 松野 敬子 様
NPO法人 Safe Kids Japan
事務局 太田由紀恵 様
誠にありがとうございました。
(*)
国民生活センター(医師からの事故情報窓口)に報告し、
本事故は消費者庁に通達され、同庁データバンクに登録されました。
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms201_200130_02.pdf
(**)
JPFA(一般社団法人日本公園施設業協会)
日本の遊具の安全を担う法人で、遊具の安全規準 JPFA-SP-S:2014を策定している。
本事故に関して2度にわたり質問状を送付し回答を頂きましたが、
バナナ滑り台は安全規準を満たしており、構造に問題はないとのこと。
今後は年齢表示シールの工夫、およびシールの認知度を向上させるとのこと。
自らが定めた安全規準をどう解釈されたのか、甚だ疑問に残る回答でした。
(バナナ滑り台の事故:更新日2023年2月1日)